関数電卓コラム

08/04/14 CALC機能を使おう

SHARP EL-509Fの発売により,国内3大メーカーの普及機種でCALC機能が使えるようになった.今回はCALC機能をどういう時に使うと便利か,その使い方について解説しよう.

ちなみに,本サイトで紹介している電卓についてCALC機能の有無を一覧表でまとめると以下のようになる.

関数電卓の[CALC]機能の有無

メーカー     備考
CASIO fx-991s × VPAM
  fx-991W SVPAM
  fx-350TL × SVPAM
  fx-991MS SVPAM
  fx-912ES Natural Display
Canon F-720i ×  
  F-788dx  
  F-715S ×  
  F-766S 持っていないが写真で確認
SHARP EL-509E ×  
  EL-509F  
  EL-520E  
BLT fx-350TL × CASIO fx-350TLのコピー
HP 10s ×  

※CALC機能とはCanon,CASIOの呼び方で,SHARPは「シミュレーション計算機能」と呼んでいる.

CALC機能は数値積分機能とワンセットで付いてくるので,かつては中級~上級機種にしか装備されていなかった.最近では入門機でも積分が出来る機種が増えてきたのでCALC機能を装備した電卓も増えてきた.

工学部の物理実験,「インピーダンス」のテーマにおいて以下のような計算が登場する.


図1: RC直列回路からコンデンサーのインピーダンスを計算

いちおう,電卓初心者の学生のために,以下のようなスライドを用意してあるが,


図2: 図1の計算の,標準的な打鍵

これでも10ポイントのデータについてのインピーダンスを全て計算させると30分はかかってしまう.早い人は早いんだけどね.CALC機能を使うと,これを,わずか2分で終わらせることが可能だ.例として,CASIO fx-912ESを使ってやってみよう.


図3: 実験指導書より「インピーダンス」計測結果記入例[1]

実験では,上のように周波数を変えながらEcを計測,それぞれの周波数におけるコンデンサーのインピーダンスを計算する.まず,変数に数表の一番上のEcを代入.変数は別に何でも良いが,ここではXを使う.
入力方法は[9][.][6][SHIFT][STO][X]

続いて,数式を,変数Xを使った形で入力.

こういう計算はnatural dislay機の使いやすさが光る.

※始めに,変数Xにゼロでない値を入れておかないと計算がゼロ割りになってしまうため,Xへの入力を数式定義より先に行う必要がある.ゼロ割りにならない計算なら,Xへの代入を後回しにしても良い.

すると答はで,[S<=>D]キーで変換,を得る.ついでに,[ENG]キーを使うととなることを憶えておこう.

さて,次のデータは8.6Vだったとしよう.同じ数式で,Xが8.6のときの値を知るには,

[CALC]

を押す.すると画面はとなり,Xの値を入力するよう促す.8.6を代入,[=]を押せば,たちどころに答えが!

Canon,CASIOのソルブ機能はSHARPに比べ更に気の利いた機能がある.ここで,次のデータを入力するときに,[CALC]キーでなく[=]キーをもう一度押す.すると,またXの入力画面に戻るのだ.つまり,異なるデータでの繰り返し計算は

  1. 1番目のデータを入力(必ずしも必要ではないがゼロ割り防止)
  2. 数式を入力,[=]
  3. 1番目の答えを得る
  4. [CALC]キーを押すし,2番目のデータを入力
  5. 2番目の答えを得る
  6. [=]キーを押し,3番めのデータを入力
  7. 3番目の答えを得る

となる.データが10個くらいなら,2分で終わるというのも誇張ではないことが分かるだろう.

意外に使われていないCALC機能,是非活用して欲しい.


私がお勧めするSHARP EL-509Eにはこの機能は付いていなかったが,昨年モデルチェンジした後継機,EL-509Fにはカルク機能が付いた.シャープではこれを「シミュレーション計算機能」と呼んでいる.ボタンはファンクションエリア右上の[2ndF][ALGB]キー.どうして,SHARPは重要な機能を裏側に持って行っちまうのか.ユーザーインターフェースの点で言えば,[=]キーで連続計算出来ない点も不満.


[CALC]キーの無い電卓でも似たようなことは可能.

まずXに9.6を代入して,インピーダンスを計算.

次に,Xに2番目のデータを代入する.手順は最初のデータと同じく, 入力方法は[8][.][6][SHIFT][STO][X]だ.

そして,数式を一つ遡る.上矢印キーを押すと,先ほど入力した数式が現れるので,[=]キーで再計算.すると,Xに8.6を代入した答えを得る.

ただしこのテクニックが使えるのはCanon,CASIOのみ.SHARP EL-509Eでこれをやろうとすると,Xに8.6を代入した時点で憶えていた数式がクリアされてしまう.どうも,SHARPの関数電卓はユーザーインターフェースに問題が多いようだ.


[1] 「物理実験」補助テキスト 発行:東海大学理学部物理学科 p. 64