絶版コレクション

CASIO fx-912ES

拡大拡大

メーカー CASIO 06/06/09初出
07/09/11補筆
08/09/27補筆
09/04/03移動
型式 fx-912ES  
実売価格 \2,980  
入力方式 自然表示  
角度モード [SHIFT][SETUP][数値]
[F<->E]キー [ENG]
メモリSTO [SHIFT][STO][A-D, M, X,Y]
メモリRCL [RCL][A-D, M, X,Y](CASIO方式)
√キー独立  
x^2キー独立  
1/xキー独立  
BSキー  
2007年現在,東海大学物理学科のシェアNo. 1を争う機種.ソーラー電池を持たないfx-370ESも機能は同等.電卓の雄,CASIOの代表的モデルなのでとりあえずはお勧めできる.2008年12月に,後進のfx-913ESに道を譲る.

この電卓,√を開かないで計算出来ることがウリとなっているが,私は違う点でこの機種に注目したい.

電卓の入力方式は,第1世代が標準電卓方式,第2世代が数式通り入力方式と考えて良いと思うが,これは全く新しい第3世代の入力方式と位置づけても良い.なにが新しいかというと,CASIOが"Natural Display"と謳っているように,この電卓は数式をWYSIWYGで入力,表示するのだ.従って分数,√等の入力ボタンが普通の電卓と異なることに注目されたい.

この恩恵を感じるために,以下の計算を考えてみよう.
       
これは,「教養物理ゼミナール」で,学生に行わせている課題の一つで,空洞共振器の共振波長を求める計算だ.こういう計算をやらせると,彼らは項一つ一つを計算し,紙に書き留めてからまた計算,と言う手順をくり返す.慣れればもちろん頭から電卓に入力することはできるが,それでも間違い易い式だ.ところが,fx-912ESならごらんの通り.
       
入力も直感的で,これをキーインするのに1分もかからない.このNatural Display方式が,関数電卓に不慣れなユーザーへの福音となるのではないか.是非東海大の1年生に使わせてみたい.

付け加えるなら,この入力方式なら左の画面にあるように積分計算の入力もわけない.このページの冒頭で「積分はパソコン」と言い切ったが,この電卓ならパソコンと同等の使い勝手で数値積分が実行できる.詳しくはコラム参照.

こうなると欲が出て,複素数もfx-4800Pの様にモード切替無しで出来るといいのに,と思う.

ただし,この電卓,一つ問題がある.小数の計算も答を分数で返すのだ.例えば

       

何とも気が利かない.Natural Display方式が「新しい入力方式」として価値が有ることにまだ設計者が気づいていない.時期モデルに期待しよう.

このモデル,後になって振り返れば,電卓のスタンダードを大きく変えた歴史的モデルとなると見た.

[ENG]キーの機能,メモリの不便さについてはfx-991MSと同じなのでそちらを参照のこと.

追記:使っていて気がついた,現行のナチュラル入力方式の欠点をもうひとつ指摘しておく.

       

の入力で,22のキーをチャッチャと打つと,一つめの2しか認識されない.CPUの処理能力が打鍵に追いついていないようだ.まだまだ,発展途上の入力方式ということがわかった.

補筆:上述のキー反応速度の問題,10^22の項が10^23だと正しく認識される.つまり,単純な反応速度の問題ではない,ということが明らかになった.まずはお詫びして訂正したい.ではなぜ複雑な式になると同じキーの連続打鍵に対する反応が鈍くなるのか.ここからは推測になるが,キーボードインターフェースに不可欠のチャタリング処理が,指定時間のウェイトでなく指定ループ回数のウェイトになっているからでは無かろうか.式が複雑になってくると式表示更新ループに時間が掛かるようになり,連続した打鍵が早いとチャタリング防止ループを抜ける前に2回目の入力が来る,と.この辺は,子供の頃にマシン語でプログラムを組んだ経験から言っているわけだがたぶん図星だろう.改善を望みたい.