・温度,圧力の基準について


 Phoenicsは,系を定義するにあたり「基準温度」「基準圧力」を任意に設定できる.デフォルトでは基準温度は273K,基準圧力は1e5Pa(ほぼ1atm)である.では,この値が計算に及ぼす影響はあるのだろうか.CHAMの説明によれば,基準温度,圧力の考え方は以下のようなものである.

  1. 基準温度,圧力を設定することにより,基準点まわりの微小な変化を精度良く記述できる
  2. 温度基準を273Kにすることにより,結果ファイルの表示する温度が自動的に[℃]になるなど,可読性が増す.
  3. 計算結果は,精度低下を別にすれば,基準点をどこにとっても同じになる.

 論より証拠.一つ実験してみることにした.テストケースに選んだのは,第6回 もう一度基本に戻る-ガスで押される液体で取り上げた系.これを,単相,圧縮性流体のケースに書き換えた.

・温度,圧力の基準がデフォルトのケース(Case00)

解析領域 0.005×0.002×0.004[m]
メッシュ 40×40×40,等間隔
流体 窒素.理想気体近似,圧縮性.
境界条件 手前と上を除く全面流出境界
スラブ(白) 断熱個体
上ガス流入量 -20.0[m/s]

q1ファイル


 まずは,温度と圧力の基準をデフォルトに選ぶ.流出境界条件は,温度を25℃,速度を0,圧力を0,乱流境界条件をin-cellとし,流出係数を1と定義した.

計算結果は下のようになった.




・温度,圧力の基準が0のケース(Case01)

 続いて,温度と圧力の基準を0とする.設定するのは以下の箇所.

  1. 基準温度,圧力の設定

  2. 初期条件の変更.いま,系は常温大気圧に近いと仮定しているので,初期条件に1e5Pa,298Kという数値を与える.

  3. 流入境界条件の変更.入力境界にも温度を定義する場所があり,基準が0Kになったのでここも変更する必要がある.

  4. 流出境界条件の変更.

q1ファイル


計算結果は,下のように基準値がデフォルトのケースと全く同じになった.これで,安心して基準温度,圧力を選ぶことが出来る.




・基準の違いに関わらず計算結果は本当に同じになるのか

 下の比較は,earthが吐き出すgxmoniをCase00とCase01で比較したものである.明らかにCase01の方が,圧力の収束が悪い.今回の計算では,系の圧力は基準値±300Pa程度しか変化しない.従って,圧力の基準は1e5Paに取るべきケースである.敢えて圧力の基準を0Paにすると,下の様に収束が悪くなると言うことが明らかになった.従って,基準圧力,基準温度は適正に選ぶべきである.

Case00のgxmoni

Case01のgxmoni

・まとめ