関数電卓博物館

CASIO fx-10

 

拡大拡大

メーカー CASIO 15/06/05初出
型式 fx-10  
発売年 1974年  
販売価格 \24,800- 参照:fx Series (Casio)
動力 単三×4 or ACアダプター  
表示方式 蛍光表示管  
コレクション
付属品
ソフトケース,ACアダプター  
CASIOが初めて世に問うポケットサイズの関数電卓.その意味では,本博物館でも重要な展示品に位置づけられる.発表は1974年で,その後,デスクトップタイプのfx-3が発売されているから,当時は「ポケット型」というのはニッチなマーケットと認識されていたようだ.

乾電池で動くことと,持ち運びできるサイズに収めるために機能は限定的.特に,関数電卓では必須と思われる,10のべき乗の入力,計算ができないのは痛い.

それでも,fx-1の325,000円から一気に一桁安くなった価格は,「これでようやく関数電卓が個人のものになった」と若手エンジニアから喝采をもって迎えられたという.

[an]キーはべき乗計算で,使い方は
[数値] [an] [数字]
である.どういう意味かというと,[an]キーの後に0~9を入力すると,[数値]の0~9乗を計算するだけのファンクション.極めて限定的な機能だが,それでも「無いよりはるかにマシ」なのだろう.

一方で,キータッチは現代の高級関数電卓ですら及ばない,しなやかで確実なものだ.それもそのはず,個々のキーにバネが仕込んであるとのこと.パソコンのキーボードも,本体が30万もしたころはずいぶん良い物がついていた.当時のキーボードは私の宝物である.

消費電力を抑えるためか,演算速度は遅い.三角関数ですらもたつく有り様だ(動画はページ下).

関数電卓に,最も重要な機能を順番に挙げていったらどうなるだろうか.三角関数と指数・対数が両巨頭で,あとは普通の電卓にも備わる平方根が入る.本機は,そこに「逆数」と「時分秒」機能を付け加えた.逆数はわかるが,時分秒機能を採用した理由は何なのだろうか.SHARP,三洋の初期のモデルにはいずれも装備されていない.当時の開発エンジニアに是非話を聞きたいところ.入力方法は,この後主流となる「小数点方式」でなく,
[時間] [o'"] [分] [o'"] [秒] [o'"]
方式.これは,CASIO fx-260Aまで受け継がれる.

比較的良いコンディションの個体が多いこと,この独特の「動きっぷり」が多くのファンの心を掴み,fx-10に関する情報は比較的多い.

70年代の関数電卓
CASIOの関数電卓
Vintage Calculators Web Museum
Casio関数電卓
casio fx-10

本機は2015年5月に名古屋にお住まいのS氏より譲渡されたもの.S氏からのメッセージについては別記事に記す.