関数電卓博物館
SHARP EL-5001
メーカー | SHARP | 11/08/23初出 | |
型式 | EL-5001 | ||
発売年 | 1977 | ||
販売価格 | \13,800- | ||
動力 | 単三×2 or ACアダプター | ||
表示方式 | 蛍光表示管 | ||
コレクション 付属品 |
なし | ||
この電卓は,東京在住の元理系ガール,まりこさんから頂いたものだ.入手の経緯については別記事を参照されたい. SHARPの多機能関数電卓.ほぼ同時期に発売のCASIO fx-102と比べると,その多機能ぶりが際だつ.本機は括弧機能,メモリはもちろんのこと,ダイヤル切り替えで統計計算や積分,複素数までこなす.SHARP製で手持ちのものだとEL-8103があるが,発売年の違いはたった3年.この時代の関数電卓の進化の早さは,なにかが狂っているとしか思えない.電卓メーカーに「ウィスパード」でもいたのだろうか. 目立つのがファンクションエリア上のダイヤルと表示窓.これは,ダイヤルで関数電卓の6つのモードを切り替える機能だ.マニュアルが無いので,ネットで調べた情報を披露すると,
これほど多機能な関数電卓にもかかわらず,現代から見れば「なぜ?」と思わせる仕様がある.「括弧とメモリが排他利用」という点である.右側にスライドスイッチ「2M -( )」があるが,これは,二つのエクストラ・メモリか,括弧キーか,どちらかの機能を選ぶキーである.[2M]を選ぶと括弧キーが使えなくなるし,[( )]を選ぶとメモリーは標準のMだけになる. つまり,この当時の関数電卓にとって,複数のランダムアクセスメモリーを実装することは,積分,複素数計算を実現するより困難というわけだ.従って,我々が普通に享受している,「掛け算優先」の機能はまだ実装されていない. SANYO CZ-5の解説で,「括弧もメモリーも装備している本機種がこの優先順位を取ると言うことは,能力的限界でなく当時の常識に合わせたということだ」と述べたが,本機のスライドスイッチはその推測が誤りである可能性を示唆している.「括弧か,メモリか」手動で選ばなくてはならないほどなので,多段スタックを必要とする「掛け算優先」は当時の電卓にとっは相当贅沢な機能だったのだろう.私のコレクションも大分充実してきたが,ただ集めるだけでなく,進化生物学の真似事を楽しむのもまた一興である. |