絶版コレクション

TI 30XB

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メーカー Texas Instruments 08/09/27初出
08/09/30修正
08/10/11追記
型式 30XB MultiView  
実売価格 17.99ユーロ(約\2,700-) リスボンのデパートで
入力方式 MultiView(Natural Displayと同じ)  
角度モード [MODE][→][enter]
[F<->E]キー × [ENG]
メモリSTO [STO][x]...[enter] (TI方式)
メモリRCL 値確認:[2nd][recall]
式代入:[x]...    (TI方式)
√キー独立 ×  
x^2キー独立  
1/xキー独立  
BSキー  
国際会議のため訪問したポルトガルの首都,リスボンで購入.1月にボストンに行ったとき,MITの生協を物色したのだがこんなのはなかった.それもそのはず,コイツはメーカーが「中等教育用」という位置づけで発売しているもの.したがって機能は一般的な関数と統計くらいだが,関数電卓として私が必要と思っている機能はすべて揃っている.
(階乗,時分秒キーが見あたらないが,これらは[prb]キーの先にあり,非常に使いにくいが機能としては装備されている.)

TI電卓のホームページを見ると,「数式通り」電卓がたくさんラインナップされており,それらは上級機種に相当する.どうやら,TIは「Natural Display」は高校生向けの機能と位置づけているらしい.何とも勿体ない話.

操作方法は,CASIOのNatural Displayとほとんど同じ.しかし電卓のOSはTIの完全オリジナルである.日本の電卓はどれも,良くも悪くも操作方法がそっくりと言って良いが,この電卓は随所に日本の電卓と違うところがあり,楽しませてくれた.詳しいレビューはここにまとめるにはスペースが少ないので,コラムで述べる.

使い勝手の違いのうち,最大の特徴はメモリ機能.携帯電話のように押した回数で変数を選択する方式だ.例えば,計算の答えをxに代入したいときには[sto][x][enter],yに代入したいときには[sto][x][x][enter]となる.

一見して面倒と思われるこの方式も,慣れると意外と楽だ.むしろ,数多くのボタンから目指す変数を探す日本方式の方が面倒に思えてしまう.人間工学の妙といえよう.かつて,「関数電卓に[Alpha]キーは不要」と書いたが,こういう解決方法は思いつかなかった.

この方式の特筆するべき点は,数式で変数を利用するときに,多くのシチュエーションで打鍵数が1で済む点だ.たとえばxに代入した値のsinを取りたいときは[sin][x][enter]でいい.多くの場合,電卓で使いたい変数は一つだけだから,このメリットは計り知れない.

そのほか,使い勝手で日本の電卓と異なり便利と思われる点を列挙すると

・ 変数に代入されている数値を一覧できる
電源offのとき,入力途中の式も含めてすべての状態を記憶している
・ CASIOのNatural Displayと違い,とりあえず答は小数で返し,[<->]ボタンで分数に変換
・ 繰り返し計算に便利なtable機能(コラム参照)

といった点が挙げられる.特に,電源が切れても入力中の式が保存される機能は日本の電卓には見られないもので,一部ユーザーからは切望されている機能.日本では,数式履歴は各種試験対策として敢えて電源offとともに消されるように設計されているが,コイツはブリスターパックの宣伝文句で「試験持込対応」を謳っている.文化の違いとしか言いようがない.

最後に欠点を挙げておこう.

・ [ans]キーが裏にある
・ [F<->E]キーがない

シンプル,ユニークなだけでなく,随所に見られる便利な操作性が特徴の本機,残念ながら日本では通販も含め入手方法は無いようだ.もし海外で見かけたら迷わず購入しよう.