化学酸素ヨウ素レーザー(COIL)

2013/05/16

化学レーザーー

化学レーザーとは,レーザー媒質の励起手段が化学反応であるようなレーザーである.化学反応生成物が直接レーザー媒質となることから,化学レーザーはほぼ例外なく気体レーザーである.例えば,薬品AとBが反応してAB*という生成物ができるとすると,

\begin{align}  {\rm A}+{\rm B}&\longrightarrow{\rm AB}^* \\  {\rm AB}^*&\longrightarrow {\rm AB}+h\nu \,\,\,\,(h\nu:レーザーの光子) \end{align}

という化学レーザーが成立する可能性がある.実際には,\({\rm AB}^* \)の生成率,反応生成物の光に対する透過性やレーザー媒質としての素性の良さ(誘導放出断面積やレーザー上・下準位の寿命など)を考慮する必要があり,レーザーとして利用できる化学反応はそれほど多くない.代表的な例は,本稿の主題である化学酸素ヨウ素レーザーの他,

  • HF(DF)レーザー フッ素(F)を含む化合物と水素(H2)または重水素(D2)の化学反応で生じるフッ酸が媒質となる.DFを使うのは,大気の減衰が少ない4\(\mu\)m帯で発振するため.
  • 燃焼型レーザー 炭化水素の燃焼で生じる炭酸ガス(CO2),あるいは一酸化炭素(CO)をレーザー媒質とする.
  • 光解離レーザー 光解離反応で生じたラジカル,あるいは続く反応によってレーザー媒質を生成する.例えばアルキルヨウ素(CF3I)や塩化水素(HCl)など.

などがある.

化学レーザーの最大の特徴は,大型化が容易なことである.レーザー装置の出力は,レーザー媒質に注入可能なパワーで決まる.固体レーザーの場合,媒質の表面から廃熱を除去する必要があり,その大きさを10cmのオーダーより大きくすることができない.単位体積あたり注入可能なパワーは限られているから,固体レーザーの出力は100kWが一つの理論的限界と言われている. 一方,気体レーザーの場合,極端に言えばレーザー発振を終えたガスは捨ててしまえば良いので,冷却の心配をする必要はない.しかも,化学反応によって生成されるパワーは反応系を大きくすればいくらでも大きくすることができるため,現在のところ200kWを超える出力を持つレーザーは例外なく化学レーザーである.現在までに作られた最大のレーザーは米軍が開発した "Alpha" HFレーザー[1]で,設計出力は5MWと言われている.

  

化学酸素ヨウ素レーザー(COIL)


図2: 化学酸素ヨウ素レーザー(COIL)の構成概念図

化学酸素ヨウ素レーザー(Chemical Oxygen-Iodine Laser)は,英語の略称COILで通称される,代表的な化学レーザーである[2].レーザー装置の概念図を図2に示す. COILは励起酸素発生器(Singlet Oxygen Generator=SOG),ヨウ素混合器及び超音速ノズル,光共振器及びレーザー空洞,そして排気システムよりなる. SOGにおいては,水酸化カリウム(KOH)などで塩基性にした過酸化水素水溶液(Basic Hydrogen Peroxide=BHP)と塩素ガスの反応により,一重項励起状態の酸素分子\({\rm O}_2(^1\Delta)\)が生成する.

\begin{align}  {\rm H}_2{\rm O}_2+2{\rm KOH}+{\rm Cl}_2\longrightarrow 2{\rm H}_2{\rm O}+2{\rm KCl}+{\rm O}_2(^1\Delta)\uparrow \end{align}

反応は気液接触反応であるが,これは極めて効率良く行われ,塩素分子はBHPの表面からほぼ数nmの深さで完全に反応する.理論的には発生した酸素は全て\({\rm O}_2(^1\Delta)\)であるが,液相から脱出するまでの間に1~2割ほどが失活する. 気相に脱出した\({\rm O}_2(^1\Delta)\)は,その分圧の二乗に比例する以下の反応

\begin{align}  {\rm O}_2(^1\Delta)+{\rm O}_2(^1\Delta)&\longrightarrow {\rm O}_2(^1\Sigma)+{\rm O}_2\\  {\rm O}_2(^1\Sigma)+{\rm H}_2{\rm O}&\longrightarrow {\rm O}_2(^1\Delta)+{\rm H}_2{\rm O} \end{align}

によりエネルギーを失うため,反応は圧力10kPa未満の陰圧下で行う.SOGにおける諸反応を図式化したものを図3に示す.


図3: SOGにおける諸反応を図式化したもの

また,酸素分圧を低く保ちつつ,下流における超音速ノズルにおいて必要な淀み点圧力を得るため,酸素の数倍のモル流量の窒素あるいはヘリウムを混合する.

生成された\({\rm O}_2(^1\Delta)\)は真空ポンプによって作られた差圧によりヨウ素混合器に輸送される.ヨウ素混合器は通常超音速ノズルを兼ねており,酸素-ヨウ素混合ガスは圧力0.1kPa,マッハ2ほどの超音速流となって共振空洞に導かれる. COILの発振メカニズムで秀逸なのは,常温では分子状態のヨウ素を解離するのに\({\rm O}_2(^1\Delta)\)を利用するという点である.そのため,ヨウ素は分子状態で注入され,続く一連の反応で自動的に原子に解離する.この「一連の反応」というのは大変複雑なもので,現在でも完全に解明されているとは言えない.ただ,最も実験結果によく合うモデルは,はじめヨウ素分子の中間励起状態(分子の振動励起状態とされている)が生成され,それがキーとなる連鎖反応である.酸素-ヨウ素系のエネルギー準位図を図4に,連鎖反応を図示したものを図5に示す.


図4: 酸素-ヨウ素系のエネルギー準位図


図5: ヨウ素解離の連鎖反応系

ノズルと共振空洞の距離は数cmで,この短い距離の間に以下の反応が起こり,\({\rm O}_2(^1\Delta)\)のエネルギーがヨウ素原子に移乗する.

\begin{align}  n{\rm O}_2(^1\Delta)+{\rm I}_2&\longrightarrow {\rm O}_2+2n{\rm I}\,\,\,\,(n=3\sim 6)\\  {\rm O}_2(^1\Delta)+{\rm I}&\longrightarrow {\rm O}_2+{\rm I}(^2P_{1/2}) \end{align}

すると,基底状態と\((^2P_{1/2}) \)励起状態のヨウ素原子の間で逆転分布が達成され,波長1.3\(\mu\)mの光子が光共振器により増幅され,最終的にレーザー光として取り出される.

\begin{align} {\rm I}(^2P_{1/2})\longrightarrow {\rm I}+h\nu \end{align}

ヨウ素解離からレーザー発振に至るまでの反応を模式図で示すと以下の様になる.


図6: ヨウ素解離からレーザー発振にいたる反応を模式的に示した図

化学反応を終えたガスは真空ポンプにより大気に排出される.ただし,排気ガスは未反応の塩素,ヨウ素などのハロゲンを含み,このまま大気に放出するわけにはいかない.出力1kW~10kWの装置で多く用いられているのが,多段排気装置の中間段を蒸気エジェクタとし,作動液をアルカリ水溶液としてハロゲンを吸着する方法である.更に,軍事用などの特殊な用途では,COILの排気を全てゼオライト吸着型の真空ポンプで吸着し,後でゆっくり脱着するという方法もとられる.1kWクラスのCOILで必要な排気量は0.1mol/s程度だが,常識的には考えられない,1kmol以上のガスを吸着できるポンプがいくつかの研究機関で開発され,COILの排気装置として稼働している[3].

 

東海大学におけるCOILの研究


図7: 東海大学COIL(3号機,出力1kW)

筆者は大学で電気工学を学び,現在は私大で物理を教える身だが,何の因果かこのユニークなレーザーと20年にわたり付き合ってきた.筆者が開発した1kW級のCOIL装置を図7に示す.

1997年以来,東海大学で筆者が行ってきたのは,主として産業用,民生用COILに要求される性能を満たすための基礎的技術の研究である.主なテーマを抜粋すると,

  • N2をバッファガスに使った超音速COIL
  • Twisted Aerosol SOG(ロシアVniiefとの共同研究)
  • カウンターフロージェット型SOG(ロシアLebedev Phys. Inst.との共同研究)
  • カウンターフロージェット型SOG(インドレーザー研究センターとの共同研究)
  • クロスフロージェット型SOG(川崎重工との共同研究)
  • 霧化型SOGの
  • 長時間動作におけるBHP性能維持
  • BHPの電気分解による再生
  • コアンダ効果を利用したエジェクターCOIL
  • 縦渦生成器(AW-Strut)による超音速混合COIL
  • COILの高圧亜音速モード動作
  • ヨウ素の放電予備解離
  • COILによる岩石の切断
  • 光解離パルス型COIL
  • COILの安定不安定型光共振器
  • Zeeman効果を利用したCOILの出力制御
  • 磁気ゲインスイッチを利用したCOILの連続パルス動作

などである.これらの研究成果については,公刊論文リストを参照いただきたい.

上述の様な,成果を公表した研究がある一方,COILにおいても他の研究と同様,「論文にならない」苦労が多くある.代表的なものは

  •  SOGの安定動作
  •  ヨウ素の安定供給
  •  腐食対策

であることは,COILの研究を経験したことがある方々には同意していただけるだろう. 前述のように,BHPはその表面で塩素と反応するため,液表面の早い更新が不可欠で,かつ発生した\({\rm O}_2(^1\Delta)\)は失活を防ぐため速やかにSOGから脱出させる必要がある.これらの条件を満たすため開発されたのが図8に示すジェット型SOGである[3].


図8: ジェット型SOGの構造概念図

BHPはポンプによって循環し,1~2atmの圧力で押し出され,数千本の液柱となって反応領域を満たす.その間を塩素ガスが通過すると,反応領域出口では90%以上が酸素に変換される仕組みである.ガスが液と水平に交差する方式をcross flow,液と反対方向に上昇する方式をcounter flowと呼ぶ. BHPは常温では自己分解するため,温度は-20℃に維持する必要がある.しかし,氷点下においても分解は完全には防げないため,BHPは負圧では容易に発泡する.したがって,一般的なインペラ型のポンプではキャビテーションが発生し,液が上がってこないことが判明した.しかも,液温が低いため軸封が破れ,反応性が高いBHPで火災を引き起こしたこともあった.結局,食品輸送用の容積型ポンプが適していることを見出した.当時,日本では複数の機関がCOILを研究しており,「怪しげな」客から多数の引き合いがあってメーカーを困惑させたと聞く.

 次に問題となったのがBHPジェットの安定性である.他の多くの機関では安定性を優先してcross flow方式を採用していたが,筆者等は安定性を度外視して性能を重視,\({\rm O}_2(^1\Delta)\)の失活が少ないcounter flow方式を採用した.さらに動作条件も1kPa程度とギリギリまで低くしたため,ガスの運動量が大きく,BHPのジェットがたびたびbreak-upした.Counter flow方式の欠点は,break-upしたジェットがガスに押し上げられ,大量のBHPが光共振器まで流れ出してしまうことで,我々はこれを「液飛び」と呼び恐れていた.結局,液飛びを防ぐ方法は始動直後の不安定な状態におけるSOG内圧制御(高圧から数秒かけて徐々に低圧に下げていく)が鍵とわかり,学生に早くから特訓を施してその「コツ」を会得させた.ローテクな解決方法である.

次に,気体のヨウ素を一定のモル流量で安定に供給する方法について述べる.ヨウ素は常温では固体で,常圧~負圧では液化せず昇華する珍しい元素である.しかし沸点は184℃と高く,完全に気化したヨウ素は取り扱いが難しい.筆者のグループでは固形のヨウ素を広い面積のSUS304製ケース(底面積200×500mm)に敷き詰め,ケースを外から湯で熱し,窒素ガスで押すことでそれなりに安定したヨウ素供給を得ることに成功した.しかし,この方法では,供給開始直後とその後の蒸発平衡状態でのヨウ素分圧が異なるため,実用レベルの安定性を得ることは到底できない.川崎重工やアメリカ空軍は,ヨウ素を高温高圧下で液化,インジェクターから噴射してレーザー装置に送り込む方式をとっている.この際,ヨウ素の構造材料に対する攻撃性が問題となり,インコネルやハステロイといった原子力プラントで使用されるような材料を使ったと聞く.

腐食は,COILが塩素,ヨウ素といったハロゲン元素を扱い,しかもSOGがウェット雰囲気のため常につきまとい,解決が難しい問題であった.上述の様な特殊金属は高価なため,装置の主要部分はせいぜいSUS304製であったが,バルブなどは1ヶ月にも満たず固着してしまうものもあった.結局,筆者を含め多くの研究機関で採用した解決策は,可能な限り構成部品を樹脂化することである.コストと大型部品の入手容易性から硬質塩化ビニル,いわゆる「塩ビパイプ」が好んで使われた.そのためCOILは他の分野の研究者から「下水管レーザー」などと揶揄されることもあった.一般的に,金属,ガラス,セラミック以外の材料でレーザー装置を作ることはまずないので,さぞ珍しく映ったことだろう.

一方で,真空排気系については,意外なほど腐食にまつわるトラブルに見舞われることは無かった.筆者のグループは2段のルーツ型ブロワの下流に蒸気エジェクタを設置,更に水封ポンプで大気圧まで圧縮するシステムを採用した.筆者がそれ以前に関わった装置は,油回転ポンプ,スクロール型ドライポンプなどを排気装置として使っていたが,いずれも1年もしないうちにサービスのお世話になる羽目となった記憶がある.「真空屋さん」にとってCOILの排気ガスの組成,流量の組み合わせは未知のものであったに違いない.

  

化学レーザーの応用

化学レーザーの最大の特徴は大出力が出せることだが,化学薬品を取り扱う煩雑さから,同じ出力が他のレーザーで出せるときには選択肢とはなりにくい.したがって,現代では,化学レーザーが想定する応用は少なくとも100kWかそれ以上の連続出力を必要とするものである. もちろん,こうした応用の筆頭にあげられるのが軍事応用である.本稿冒頭で挙げた各種化学レーザーは,そのほとんどが軍事目的の研究で生まれたものである.

防衛用化学レーザーとして実用化寸前まで行ったプロジェクトが二つある.一つはTHEL(Tactical High-Energy Laser)と呼ばれるDFレーザーで,もうひとつはCOILを利用した"Airborne Laser"(ABL)である. THELは空港などの拠点を短距離ミサイルの脅威から防衛するため,イスラエルとアメリカが共同で開発した.レーザー出力は公表されていないが,装置の規模から200kW以下と推測される.2000年にはソ連製カチューシャミサイルを撃墜してその有用性を証明したが[5],現在では実戦配備が見送られている.理由の一つとして,やはり化学レーザーであることから燃料であるNF3/C2H4の保管と供給,排気ガスであるDFの処理の問題が現場から嫌われたこと,このころから急激に出力を上げてきた固体レーザーが代替手段として魅力的に見えて来たことがあると思われる.

一方のABLは1MWクラスのCOILをB-747型航空機に搭載,数百km先の弾道ミサイルをそのブースト段階(発射直後)で狙い撃ちすることを目的として計画,建造された[6].COILは6基のモジュールを2列に並べ,単一の光共振器を駆動する.塩素流量は総計で50mol/s,1回の動作時間は数秒と見られている. 開発された試作初号機は,2010年に飛行中の弾道ミサイルを遠距離(100km程度と推定)から迎撃にすることに成功した.その際の資料映像はインターネット上で公開されており,誰でも閲覧可能である[7]. しかし,ABLは度重なる計画変更と予算超過に悩まされ,オバマ政権により正式なプログラム終了が宣言された.現在,試作初号機はアリゾナの空軍基地にモスボール保管されている.

一方,日本においては,COILは当初,切断・溶接などの板金加工を目的とした産業用レーザーとして研究が始まった.1990年代末ころまではこのコンセプトにも説得力があったが,そのころ急速に性能を上げてきたファイバレーザーが1kWの出力をスーツケースほどの大きさで出せるようになって,その意義を失っていった. 1980年代からCOILの産業応用に関わってきた川崎重工業は,これを受け大胆な方針転換を決定する.すなわち,産業用から防衛用への用途変更である.折しも,防衛省が大出力レーザーによる拠点防衛の手段としてレーザーに注目していたこともあり,現在の技術水準に鑑みて最も実用化に近いCOILが選定され,同社が試作研究の主契約社に選定された.2012現在,研究試作は第2段階にあり,最終的にはトレーラー積載型,出力100kW程度のCOILが完成の予定である.

 一方,筆者のグループは,2000年ころまでは産業応用を見据えて様々な基礎研究と要素技術開発を行ってきた.しかし,前述の事情から研究継続が困難となり,新たな民生応用の目標を掲げることした.それが「レーザーによるスペースデブリ除去」である. 現在,地球軌道上には運用を終えた人工衛星やロケットの残骸など,様々な物体が周回している.国際宇宙ステーションが回る高度400km以下の低軌道におけるその数は最新の統計で30万と言われている.直径数mm程度のデブリはシールドで防ぐことができるが,直径1cmから数十cmの大きさのデブリは対処法がなく,ぶつからないように祈るしかない,というのが現状である.

宇宙における衝突で問題なのは,発生した大量の二次デブリがいつまでも軌道を回り続け,新たな衝突を誘発する点である.これがデブリの数を加速度的に増加させ,このまま放置すれば人類は二度と宇宙に出られなくなると言われている.デブリを捕獲するいくつかの方法が提案されているが,数があまりに多いため,宇宙空間での対応はいずれも「絵に描いた餅」の域を出ず,地上設置型のレーザーを使う方法が現在の技術水準で唯一の現実的な対策である.


図9: 大出力レーザーによるスペースデブリ除去の概念図

 レーザーによるスペースデブリ除去の概念図を図9に示す.レーザーはデブリを蒸発させるわけではなく,照射により軌道と直角方向にわずかな速度成分を与えるだけでよい.およそ100 m/sの速度変化?Vを与えれば,新しい軌道は大気上層を通る様になり,地球を数周回ったのちに流れ星となる.筆者が行った計算[7]によると,口径3mの望遠鏡と1MWのヨウ素レーザーを用いれば,質量1kgのデブリは約10秒の照射で除去できる. このアイデアは各所から注目を集めたものの,実験棟の取り壊しが決まったため研究の継続が困難となり,COILの研究は2010年で終了した.しかし,筆者の夢はまだ潰えたわけではない.現在はスペースデブリ除去に利用できる新たな大出力レーザーとして有望な,「LD励起アルカリ原子レーザー」の研究を継続している.

 

まとめ

化学酸素ヨウ素レーザー(COIL)について解説した.化学レーザーは他のレーザーにくらべ超大出力であることが特徴だが,化学薬品を扱うことが欠点と見られている.COILを含む,超大出力化学レーザーの応用分野について,近年の産業用レーザーの動向も含め解説した.産業用レーザーとしてのCOILは2000年ころにその役割を終えたが,防衛用途では未だ代替手段が無い光源として期待されている.筆者が提唱する,化学レーザーを用いたスペースデブリ除去のコンセプトについて簡単に触れた.

 

参考文献

  1. Richard Ackerman et al., “Alpha high power laser program,” Proc. SPIE 2502 (1994), pp. 358-354.
  2. M. Endo and R. F. Walter (ed), “Gas Lasers” (CRC Press 2007), pp. 413-496.
  3. J. Vetrovec, “Chemical Oxygen-Iodine Laser with a Cryosorption Vacuum Pump,” Proc. SPIE 3931 (2000), pp. 60-70.
  4. M. V. Zagidullin, “Liquid jet O2(1?) generator for chemical oxygen-iodine laser,” Proc. SPIE 2502 (1994), pp. 208-216.
  5. J. Shwantz et al., “Tactical High Energy Laser,” Proc. SPIE 4632 (2002), pp. 10-20.
  6. K. A. Truesdell, “Recent Airborne Laser - Laser Results,” Proc. SPIE 6346 (2007), 63461L (17pp).
  7. 遠藤雅守, 「大出力レーザーーによるスペースデブリ除去の可能性」, 宇宙航空研究開発機構特別資料 JAXA-SP-10-011 (2011) pp. 331-3432.