電磁場(SP)

レポート課題1 出題 05/18 〆切 05/25

Q1(必修):真空中に,電荷密度が原点からの距離\(r\)の関数で

\begin{align} \rho(r)=\rho_0 \exp\left[-\left(\frac{r}{R}\right)^3\right] \end{align}

と与えられる電荷がある($\rho_0$,$R$は正の定数).以下の問に答えよ.

(1) 全電荷量を求めよ.

(2) 電場を\(r\)の関数で表わせ.

ここで,下記の積分公式を用いることができる.

\begin{align} \label{Q1-Fomula} \int r^2 \exp\left[-\left(\frac{r}{R}\right)^3\right] \rd r=-\frac{1}{3}\exp\left[-\left(\frac{r}{R}\right)^3\right] R^3 \end{align}

Q2(選択):電荷密度が,正の整数$n$を使い

\begin{align} \label{Q2-1} \rho(r)=\rho_0 \exp\left[-\left(\frac{r}{R}\right)^n\right] \end{align}

と与えられるとする.$n$を無限に大きくしたときの電場を,$r$の関数で表わせ.


解答及び解説:おなじみの,分布電荷が作る電場の問題.球対称の電荷分布は体積積分がやっかいだが,不定積分がヒントとして与えられているので,単にこれは「ガウスの法則が理解できているかどうか」という問題にすぎない.もちろん,基本的な数学の知識は前提としている.

Q1(1):球対称な電荷密度が与えられているとき,全電荷量は以下の積分で求められる.

\begin{align} Q = \int_0^\infty \rho(r) 4\pi r^2 \rd r \end{align}

電荷密度の定義式を代入し,計算すれば,答えは

\begin{align} Q=\frac{4}{3}\pi R^3 \rho_0 \end{align}

となる.大変興味深い結果だ.ちなみに,式(\ref{Q2-1})の形で,不定積分が初等関数で表せるのは$n=3$の場合のみである.

Q1(2):ガウスの法則を素直に適用する.電場が球対称なのは明らかだから,これを$E(r)$と置く.半径$r$のガウス面において以下の関係が成立する.

\begin{align} \label{A1-2-1} \int_0^r 4\pi \rho_0 r^2 \exp\left[-\left(\frac{r}{R}\right)^3\right] \rd r= 4\pi \epsilon_0 r^2 E(r) \end{align}

左辺の定積分は式(\ref{Q1-Fomula})を使えば容易で,最後に式(\ref{A1-2-1})を$E(r)$について解けば解を得る.

\begin{align} E(r) = \frac{\rho_0 R^3}{3 \epsilon_0 r^2}\left[1-\exp\left\{-\left(\frac{r}{R}\right)^3\right\}\right] \end{align}

Q2:難しいようで実は簡単な問題.$n\rightarrow\infty$としたとき,電荷密度は「$r\lt R$のとき$\rho_0$,$r \gt R$のとき0」になることに気づけば,あとは 「穴埋め式電磁気学」レベルの問題である.

\begin{align} E(r) &= \frac{\rho_0 r}{3 \epsilon_0 }   (r\lt R)\\ E(r) &= \frac{\rho_0 R^3}{3 \epsilon_0 r^2}  (r\gt R) \end{align}

残念だったのは,Q1の電場の計算で「場合分け」をしたレポートが多かったこと.ガウスの法則の意味がわかっていない.また,Q2で,電荷分布は求められたものの,電荷の無い領域の電場を「ゼロ」とした解が散見された.いずれも,私が仕掛けたワナにまんまと嵌ったわけだが, これを契機に「物理は暗記科目ではない」ことを再認識してもらいたい.

採点基準は,Q1が両方正解のレポートをA,どちらかのみが正解のものをB,不正解をCとした.また,全問正解をA+とし,特に優れた内容のレポートをA++とした.

レポート課題2 出題 07/06 〆切 07/20

Q1(必修):真空中に置かれた半径$a$,電流$I$の円形ループコイルが発する磁場において,アンペールの法則が成立することを示す.座標系を図のように取る. 積分経路は,①コイル中心からコイルに垂直な軸上を登り,②半径$R$の半円でコイル側面を回り,③コイルに垂直な軸を登る経路とする.以下の問に答えよ.

(1) コイル軸上の磁場を$z$の関数で表しなさい.

(2) 経路②に沿って磁場を線積分した値は,$R$を無限大に漸近させていくと消滅する.理由を説明しなさい.

(3) アンペールの法則が成り立っていることを示しなさい.

Q2(選択):Q1(2)の性質を,数式を用いて証明しなさい.


解答及び解説:ループコイルが作る磁場は複雑で,アンペールの法則を適用するのは困難と思うかもしれないが,積分経路を工夫すれば解析的な積分は意外に容易である. 物理を学ぶためには数学の能力が必要不可欠であることが再認識される問題.

Q1

(1) 解は以下の通り.解法はどんな教科書にも載っているのでここでは示さない.本講の教科書では章末問題5.4(p176)が相当する.

\begin{align} B_z = \frac{\mu_0 I}{2}\frac{a^2}{(a^2+z^2)^{3/2}} \end{align}

(2) 有限の領域にある電流から発せられた磁場は,ビオ・サバールの法則から,遠方では$R^{-2}$に比例して減衰する.ここで$R$は電流からの距離である. 一方,積分路②は,たかだか$R$に比例して増加するのみなので,線積分の値は$R^{-1}$に比例して減衰し,$R\rightarrow \infty$で消滅する.

「$R\rightarrow \infty$で磁場が消滅するので積分値もゼロに漸近する」とした解が多かったが,これは不正解.積分路の長さも無限に長くなっていくので,積分値がゼロに漸近するかどうかは別の問題.例えば,点電荷を囲む球面を貫く電束は,球の半径を大きくするとどうなるか?

(3) (2)の性質から,$R$を無限に大きくすると,アンペールの周回積分は

\begin{align} \int_{-\infty}^{\infty} \frac{\mu_0 I}{2}\frac{a^2}{(a^2+z^2)^{3/2}} \rd z \end{align}

となる.積分すれば,答は$\mu_0 I$となって,アンペールの法則が成立することが示される.

積分計算にはいくつか方法があるが,$z$を以下の様に$\theta$で表し,置換積分するのが定石だろう.

 

\begin{align} a\tan\theta &= z\\ \rd z &= \frac{a}{\cos^2\theta} \rd \theta\\ \int_{-\infty}^{\infty} \frac{\mu_0 I}{2}\frac{a^2}{(a^2+z^2)^{3/2}} \rd z &=\int_{-\pi/2}^{\pi/2} \frac{\mu_0 I}{2}\cos\theta \rd \theta \end{align}

しかし,この程度の不定積分ならMathematicaに訊くのが手っ取り早い.道具を使いこなすのも実力のうちだ.

Q2

ループコイルから充分遠いところでは,磁場は磁気モーメントが発するものと同じと考えてよい.

\begin{align} B_r = \frac{\mu_0 I S}{2\pi}\frac{\cos\theta}{r^3}\\ B_\theta = \frac{\mu_0 I S}{4\pi}\frac{\sin\theta}{r^3}\\ \end{align}

ここで,$S=\pi a^2$はループの面積である.

経路②の積分は以下のように書ける.

\begin{align} \Phi = \int_0^\pi \frac{\mu_0 I S}{4\pi}\frac{\sin\theta}{R^3}R\rd \theta \end{align}

積分は容易で,以下の結果を得る.

\begin{align} \label{02-1} \Phi = \frac{\mu_0 I S}{2\pi R^2} \end{align}

式(\ref{02-1})から,$R$を無限大に大きくしていくと積分値はゼロに漸近することが示された.

Q1が全問正解ならA,2問でB,1問でCを基礎点とする.Q2は1名だけ正解者がいた.ループコイルから充分遠いところで,ループコイルの磁場と,講義で習った磁気モーメントの磁場が一致することを見抜いたセンスは評価に値する.