電磁場(SP)

レポート課題1 出題 05/26 〆切 06/02

Q1: 一様な線電荷密度τに帯電した,半径Rの細いリングがある.リング中央から距離aの点Pにおける電場の大きさを求めよ.
Q2: 一様な面電荷密度σに帯電した,半径Rの薄い円盤がある.円盤中央から距離aの点Pにおける電場の大きさを求めよ.
Q3: Q2の条件で,aをゼロに漸近させたときの電場の大きさを求め,ここから得られる物理的洞察について述べよ..

解答及び解説:分布電荷が作る電場の問題は,電磁気学の教科書では標準的なものである.本講義の教科書でもリング状電荷が軸上に作る電場の問題は1章で取り上げられている.

解き方は,①直接電場を積分する ②ポテンシャルを求め,微分する の二通りが考えられるが,これくらい対称性が良い系なら直接電場を積分してしまおう.

Q1:独立変数をθにとる.リング上の微小な断片RdθがP点に作る電場はで,電場は図の矢印の方向に向かう.このうち軸に垂直な成分は打ち消し合って消えてしまうので,平行な成分,すなわちのみを積分する.結局,求めるのは以下の積分.

(1)

独立変数θが積分に含まれないので,計算は見かけより遥かに単純である.

Q2:Q1の解がスタート地点となる.面電荷密度σのシート上に,半径r,太さdrの薄いリングを仮定する.リング上の線電荷密度はτ=σdrで,これを(1)代入,r=0からRまで積分すればシート状電荷が作る電場が求められる.

の積分が難しいかもしれないが,「積分公式集」をあたっても良いし,Mathematicaにやらせてもよい.

Q3:aをゼロに漸近させると括弧の第2項はゼロに近づく.すなわち,電場の大きさはに漸近する.これは,「無限に広い電荷密度σのシート状電荷が作る電場」に等しい.つまり,aをゼロに漸近させることは,P点の立場からすればシートが無限に広くなったのと同じ意味を持つ.

※ここでは証明は省略するが,レポートならガウスの法則を用いてきちんと証明すべきである.

採点基準は,Q1は間違ったことが書いてなければ○.Q2は,問題が重積分であること(またはQ1の解を利用すること)が書かれており,その計算が正しければ○.答えだけは合っているものは△.Q3は物理的洞察にキーワード「ガウスの法則」が入っているものを○とする.「電場がaによらない」や「Rが無限に大きくなったのと等価」では洞察として不十分で,他の方法で求めた無限に広い電荷シートの電場との一致をもってはじめて「無限に広い電荷シートとみなせる」と言えることに注意せよ.

 

レポート課題2 出題 07/14 〆切 07/21

Q1: 教科書では,磁気モーメントmが発する磁場を計算するためにループ電流が作るベクトルポテンシャルを用いた.しかし,E-H対応の電磁気学を使えば,磁気モーメントに対応する磁気双極子が発する磁場の計算を行えばよい.これを行い,結果が教科書p215と一致することを示しなさい.

  1. 磁気モーメントmと等価な磁気双極子モーメントの大きさを求めよ.
  2. 磁気双極子モーメントが作る「磁位」(スカラポテンシャル場)を求めよ.
  3. 磁位の勾配を求め,ベクトル場Bを決定せよ.

Q2: (オプション) 教科書では以下の方法を用いアンペールの法則とビオ・サバールの法則が等価であることを示した.

1. 直線電流において両者が等価であることを示し,続いて任意の電流分布が直線電流の重ね合わせであることに言及
2. 一つの電流素片が作る磁場に対してアンペールの法則が成り立つことを証明


それ以外の方法を探して報告せよ.レポート用紙に参考にした文献と,その証明を示すこと.ただし,以下の方法は解答から除外する.

・前野昌弘「よくわかる電磁気学」 p. 199-201にある,ベクトル三重積を用いた方法 → 参考
・Wikipediaの「ビオ・サバールの法則」に示された方法

参考文献は書籍,論文あるいはそれに相当する公刊されたものに限定する.

※Q1に正しく解答すればAの判定が出るので無理をしないこと.


解答及び解説:今回の課題は,例年に比べれば容易な問題.ポイントは,「教科書の丸写し」では解けないことだけで,1. の「置き換え」さえ出来てしまえばあとは4章の誘電体の理論をそのままなぞればよい.

Q1:1. 式(7.10)を使い,mと等価な磁気双極子モーメントは.問では大きさだけ聞かれているので が正解.まあ,ここは細かいことは言わない.

磁気双極子モーメントの定義はだが,これは問1を解くためには何の役にも立たない.書いてある解は減点.ただし,次元の整合性を見ている解は例外である.

教科書を見て,答えだけを書けば正解としたが,本来は換算係数のμ0を自ら導出する必要がある.この係数を求めるにはどうするか.これは,mと同じ磁場を発する磁気双極子の大きさを求めればよい.ただし,全空間にわたりを求める方法は,この課題でこれから行おうとすることにかぶるので面白くない.他の方法を考えよう.一例として,磁気双極子と微小ループ電流が一様な外部磁場から受けるトルクをそれぞれ計算,両者を比較するという方法がある.これは高校レベルの電磁気学だ(遠藤他,「高校と大学をつなぐ穴埋め式電磁気学」 p88).

今回,一人だけこの課題にきちんと取り組んだ人いた.解答がこれ.z軸上の磁場をループ電流と磁気双極子で比較している.優秀な解答だ.

2. 式(7.7)のpmを代入する.答は.ここはベクトルの内積だから,ベクトルとスカラの表記が区別できないもの,ベクトルとベクトルの積が内積の表記になっていないものは不正解.mを使っていない解は本来なら不正解としたいが,ほとんどいなかったので今回は大目にみる.

3. の勾配を極座標で計算する.正確にはだから,負号と係数μ0を忘れないように注意する.極座標の勾配は教科書p280の式(A.28).成分毎に書き下せば,

を得る.これはp215の結果と完全に一致する.したがってE-H対応の考え方でも磁気モーメントが発する磁場を計算できることがわかった.

Q2:エントリーしたのは3人.ソースは以下の通り.

  • 北川盈雄 「物理学演習 One Point 1 アンペールの法則」 (共立出版,1997)
  • 熊谷信昭 「電磁理論」 (コロナ社,1990)
  • 熊谷信昭 「電磁理論演習」 (コロナ社,1998)

どちらも,磁場のガウスの法則からベクトルポテンシャルの存在を指摘,アンペールの法則と組み合わせれば原点にある電流素片が作るベクトルポテンシャルが決定でき,そこから直接ビオ-サバールの導出するというもの.本講では,磁場のガウスの法則は,ベクトルポテンシャルが存在する帰結として導かれるので,この流れはわかりにくいかもしれない.簡単な解説を以下に示す.式番号は遠藤「電磁気学」に準拠.

磁場のガウスの法則(6. 8)から,磁場Bはあるベクトル場Aの回転で表せる※1.すなわち(6. 4)である.アンペールの法則(5. 27)に式(6. 4)を代入,ベクトル恒等式(A. 11)と(6. 27)※2を使えば,ポアソンの方程式(6. 24)を得る.この方程式から,原点にある電流素片が作るベクトルポテンシャルが(6. 5)であることがわかる※3

※1:発散が至る所ゼロのベクトル場は,あるベクトル場の回転で表せる.
※2:これは自明な性質ではなく,熊谷「電磁理論」ではポテンシャルの任意性を使い,ベクトルポテンシャルが持つ性質として「を仮定しても構わない」,としている.このようなポテンシャルの決め方を「クーロンゲージ」と呼ぶ.
※3:なぜ,直ちにそう言えるかは,遠藤「電磁気学」p192に記載されている.

一方,ベクトルポテンシャルの定義(6. 4)に,原点にある電流素片が作るベクトルポテンシャル(6. 5)を代入すれば以下の形を得る.

ベクトル恒等式,(A.8)を使い変形する.

後半のは,dsが定ベクトルであるため消滅.前半の微分は(A.15)より.である.整理すれば

(5.17)

を得て,ビオ-サバールの法則が導出される.

本講の立場から言えば,原点にあるベクトルポテンシャルが(6. 5)と書けるならば,そこから自動的ポアソンの方程式が導かれ,アンペールの法則が導ける一方で,上記の式変形からビオ-サバールの法則にたどり着く.すなわち,アンペールの法則とビオ-サバールの法則は,クーロンゲージのベクトルポテンシャル(6. 5)の異なる側面にすぎない.

他にも探したが,前野昌弘「よくわかる電磁気学」のp204に,磁気クーロンの法則からたった3行でビオ-サバールの法則が導出できる面白い方法を見つけた.ただし,これは本課題の「アンペールの法則とビオ-サバールの法則の等価性」を直接証明したものではないので解としては対象外となる.

今回の課題は私にも良い勉強になった.他にも証明方法はあるだろう.見つけた諸君はぜひ教えてほしい.