2015年度レポート課題

※レポート課題は締め切り日の17:00までに物理学科事務室ポストに提出のこと.授業開始時,授業終了時にも受け付ける.
※レポート課題はA4の用紙を使用して解答のこと.表紙は不要.手書きの場合はレポート用紙の使用を推奨する.

第1回 05/07 〆切 05/14

Q1: 一様な電荷密度ρに帯電した,半径aの球がある.球の中心を原点に取る.系の対称性から電場はrの関数であることが明らかである.系の電場をrの関数で示しなさい.ただし,解法としてラプラス・ポアソンの方程式を使うこと.
Q2: 同じ問題を,教科書の式(1.9)を用いて解きなさい.

※Q2の解答は任意とする.

答はガウスの法則を使えばほぼ自明.したがって,レポートの評価は,最終的な解ではなく途中の解法に対して行われることに注意.


解答及び解説:Q1の解法は教科書 p90〜p92に掲載されているのでここでは再掲しない.評価のポイントは,与えられた問に対してふさわしいレポートになっているかどうかである.

まず,レポート用紙1枚で提出したものは明らかに説明不足なのでB.教科書p90〜p91の流れに沿って解答したものにAを与えている.解答が間違っているものはC,そもそも問題の意味がわかっていない解答にはE評価を与えた.

極座標のラプラシアン導出から始めた解答がかなりあったが,そもそもそれが必要かどうか考えてみるとよい.なぜ,デカルト座標のラプラシアンは「知っているべき」知識で,極座標のラプラシアンは「導出すべき」知識と言えるのだろうか.デカルト座標も,いくつかある座標系の一つにすぎず,極座標のラプラシアンをデカルト座標から導出するのは邪道.デカルト座標のラプラシアンを出発点にして,極座標のラプラシアンを導出している解答は減点した.

残念ながら気づいた人は一人もいなかったのだが,そもそもこの問題で電位を決定する必要はない.教科書の式(3.20),(3.21)の両辺にr2を掛けて一回積分すれば以下の形を得る.
球内部:     球外部:

ここで計算を止めて,あとはが系の電場を表すことに気づけば,
球内部:     球外部:

を得る.定数C1は電荷密度が有限であることからゼロ,C3は,r=aで電場が連続という条件から確定する.これが,真の意味での正解である.

球状電荷が作る電場を直接計算させることは,ほとんどの電磁気学の教科書で行われていない.なぜなら,遥かに楽な「ガウスの法則」を習うので.一方,ニュートン力学の教科書では,球状の物体が質点に及ぼす万有引力は定番の問題で,3次元積分の良い練習問題となっている.したがって,Q2に挑んだ諸君は力学の教科書を探すべきであった.

とは言ったものの,実際には力学でも先に球状物体が作る重力ポテンシャルを求め,その微分から重力を計算しているものが多い.理由は,本「電磁気学」で述べたとおり,ポテンシャルがスカラ関数で,3次元積分の実行が楽だからである.というわけで,ポテンシャルから重力を計算している教科書は参考にならない.

結局良い教科書が見つからなかったので,ここで模範解答を示すことにする.計算は以下の3ステップで行う.


図1: リング状電荷が作る電場

第1ステップとして,半径lのリング状電荷がリング中心からR’離れた点に作る電場を計算する.系の概念図を図1に示す.便宜的にリングをx-y平面に置き,R’をz軸方向に取る.リングの断面積をS,電荷密度をρとすると,微小線素rdφの電荷がP点に作る電場は

である.このうち,電場のz軸成分に平行でない成分は,対称性の議論から互いに打ち消し合うはずなので,電場のz成分のみを考慮する.すると,全ての線素がP点に作る電場は積分して,
      (1)
とわかる.


図2: 球殻状電荷が作る電場

続いて第2ステップ.概念図を図2に示す.半径rの球殻を,z軸に垂直な面で輪切りにする.球殻の厚さはdr,リングの半径をl,リングからP点までの距離をR'’,球殻中心からP点までの距離をRとする.1つのリングがP点に作る電場は式(1)で,すでに計算されている.ただし,リングの断面積Sを図2の変数に置き換えなくてはならない.切り口はz軸に垂直だから,断面の高さはdz,横幅はとわかる.一方,リングの周長は2πlだから体積はとなり,都合よくlが消える.記号の対応に注意しながら図2の諸量を式(1)に代入していくと,1個のリングがP点に作る電場dE

となる.R’をR-zに,l2r2-z2に置き換えれば,
     (2)
を得る.球殻が作る電場はこれらのリングが作る電場をすべて足しあわせたものだから,
     (3)
である.

さて,(3)は初等的に積分可能なのだろうか.このような場合,変数変換や置換積分,部分積分などのテクニックを駆使して,積分可能な形に変換することが常道である.例えば「一様な球と質点の間の万有引力」「補足(球殻が作る重力)」など.しかし,現代の我々にはMathematicaという心強い味方がいる.コイツは,たいていの人間より賢いから,この形が初等的に積分可能かどうか訊いてみる.

できるらしい.すると,球殻がP点に作る電場は,以下の計算を行えば良いことになる.
     (4)
丹念に計算すると,分母が因数分解できて,以下の形を得る.

と同じ意味で,P点が球殻の外にあるときは(R-r),中にあるときは(r-R)である.場合分けしてそれぞれ計算しよう.
R>rのとき:
R<rのとき:

このステップでもMathematicaを使ったのは内緒だ.よく知られた,「球殻の内側は無重力」という結果を得た.したがって球殻の内側には電場も存在しない.球殻外側の電場は,
     (5)

である.ガウスの法則を使えば,「球殻の内側に電場はない」こと,「球殻外側の電場は,球殻の電荷量を原点に置いた時の,点電荷が発する電場と等しい」ことはすぐわかる.大変な苦労をして,ようやくここまで辿り着いた.


図3: 球状電荷が作る電場

最後のステップは簡単である.図3のように,R<aのときは式(5)を0からRまで,R>aのときは式(5)を0からaまで積分する.結果だけ示すと,
R>aのとき:
R<aのとき:

である.


第2回 07/02 〆切 07/10

Q1: 右図のような,充分長く密に巻かれたソレノイドに電流Iを流す.蓄えられるエネルギーを以下の3種類の方法でそれぞれ計算せよ.
  1. ソレノイドのインダクタンスを求めて,インダクタンスとエネルギーの公式を使う.
  2. ベクトルポテンシャルと電流の積を積分する.
  3. ソレノイド内部の磁場エネルギーを体積積分する.
近似として,ソレノイド内部の磁束密度は軸にそって一様,外部の磁束密度は無視できるものとする.
Q2: 右図のように,前述のソレノイドに透磁率μの磁性体を挿 入し,中央で分割して隙間をxだけ空けた.このとき,磁性体には互いに引っ張り合う力が発生するが,電流Iを流したときの引張力の大きさを求めよ.

Q1は必ず解答すること.Q1が全問正解ならA評価.Q2はボーナス問題.

レポートの評価は,最終的な解ではなく途中の解法に対して行われることに注意.特に,第1回レポートでは,本人にも意味がわかっていないと思われる記述が目立ったので再度注意しておく.


解答及び解説:今回は,課題としては甘すぎた.Q1の正解は以下のとおり.

  1. ソレノイドのンダクタンスはで(教科書p196),エネルギーの公式を代入すれば
  2. 出題にミスがあった.ごめんなさい.ベクトルポテンシャルは,対称性の良い系でないと計算できない.これをどう料理したかも採点の対象としよう.ベクトルポテンシャルを計算するため,ソレノイドを円形断面と仮定する.すると,半径rAを使いである.ソレノイドが作るベクトルポテンシャルは電流と同じ方向に渦を巻くベクトル場で,電流の位置の大きさはである.(教科書p201).エネルギーはで求められるが,今考えている系では電流はソレノイドに沿って流れるIのみである.したがって積分は(Aはベクトルポテンシャル)で与えられる.計算すると答えはで,(1)と一致する.

    ※幸い,何の迷いもなく「円形断面」と仮定して正解に至ったレポートが多数.意図は伝わったようだ.

  3. ソレノイド内部の磁場がであることは言うまでもない.あとは,体積Adと磁場エネルギーの公式を使い,.これも,(1)(2)の解と一致する.

(2)を,磁束密度の面積分や磁場の体積積分に直した解は不正解とする.もちろん,出題に不備があり,導線上のベクトルポテンシャルは不定なのだが,そのことに言及せずに磁束密度や磁場エネルギーを使った解は出題の意図を理解していないと判断した.全問正解をA,解法はともかく,(2)の結果が合っているものをA-とした.

毎回指摘していることだが,解に至るまでの道筋には不要な証明を長々と書いているレポートがかなりあった.紙のムダであるだけでなく,採点する方としても時間のムダであるので慎んで欲しい.例えば,磁場エネルギーがの体積積分で与えられることを証明しているレポートが随分たくさんあったが,そもそもこの事実は問(3)の前提条件となっていることに気づかないのだろうか.結局,上で指摘したように「本人にも意味がわかっていない」ことが透けて見えるレポートとなってしまうのである.

Q2は「仮想変位の方法」を使う.仮に,xがdxだけ広がったとして,磁場エネルギーがどれほど増えるかを計算する.すると,吸引力はで与えられる(教科書p240).系の対称性とソレノイドの無限長近似から,dxの区間以外に変化は無いと仮定してよい.
図のオレンジの部分の体積が持つエネルギーを計算する.磁束線が切れないと言う性質から,ソレノイド内部の磁束密度はどこでもと考えて良いだろう.すると,オレンジ色の部分のエネルギーは,からに増加する.したがって,吸引力はである.