2014年度レポート課題

※レポート課題は締め切り日の17:00までに物理学科事務室ポストに提出のこと.授業開始時,授業終了時にも受け付ける.
※レポート課題はA4の用紙を使用して解答のこと.表紙は不要.手書きの場合はレポート用紙の使用を推奨する.

第1回 05/08 〆切 05/15

Q1: 以下に示す方法で,半径aの球の体積を計算せよ.

(a) 原点を球の中心に置き,極座標を採用する.

(b) 右図の様に球をスライスして,各スライスの体積をr,θで表す.ポイントはdzをr,θを使い表すこと.

(c) 積分する.
Q1: 右図の様に内半径a,外半径bの球殻があり,一様な電荷密度ρで電荷が存在する.球殻の中心を原点にとり,以下の問いに答えよ.

(a) 系の電場,電位を半径rの関数で表せ.

(b) (a)の解をそれぞれグラフで表示せよ.

ポイントは,ただ最終的な解が正しいことでなく,そこに至る筋道が明解で,かつ必然的であること.当然,解に至る筋道は文章で説明すること.したがって,解が正しくても大きく減点される場合がある.


解答及び解説:Q1は,実は「力学演習」で教えている.球の体積を様々な方法で求めたスライドを見せたのを覚えているだろうか.ここで一挙公開しよう.

どの方法で体積を分割しても,積分が正しければ答はになるはずだから,正解かどうかは「体積の分割の仕方」が正しいかどうかで判断する.積分にが登場しない解は間違っている可能性が高い.rをゼロからaまで積分した解が相当あったが,スライスの体積にrは含まれないのでこれは間違い.

Q2には色々な解法があるが,最も計算を間違えやすいのがラプラス・ポアソンの方程式を解く方法.今は解法は指定されていないのでこれは避けた方が無難.次に,ガウスの法則をまともに適用するのはまあ良い考えだが,これも慎重に計算しないと相当面倒くさい.

最もスマートな解法は,「電場にも電位にも重ね合わせの原理が成り立つ」ことを利用して,「電荷密度-ρ,半径aの球が作る電位・電場」と「電荷密度+ρ,半径bの球が作る電位・電場」を重ね合わせること.これなら,答は教科書に載っているので積分の必要すらない.

正解に至った諸君は,解がこの形になっているのに気づいたのではないかな?

半径 電荷密度-ρ 電荷密度+ρ 荷重ね合わせ
電場 電位 電場 電位 電場 電位
r<a 0
a<r<b
b<r

グラフを描くのには少々コツが必要.ポイントは,

1: 電場も電位も連続(グラフがジャンプしない)であること→教科書p92
2: 1の要請から,電位はそれぞれの境界で滑らかにつながっていること(微分が連続のため)

になっているかどうかだ.グラフを描くソフトの使用は禁止どころかむしろ推奨されるのだが,だれもやってくれなかった.

例として,Excelでちゃちゃっとやった結果を以下に示す.グラフは,Excelで出力したものをPower Pointで加工した.

Graph.xlsx

配点は,2問正解がA,1問正解がBで,あとは途中式などを考慮して評価した.
模範解答1:ポアソンの方程式を積分したもの
模範解答2:ガウスの法則を適用したもの

いずれのレポートも,必要十分な内容とわかりやすい報告を高く評価する.


第2回 07/03 〆切 07/17

Q1: 無限長直線電流が発する磁場をローレンツ収縮で説明するため,以下の計算を行った.各問に答えよ.具体的に以下の仮定を置くものとする.

(a) 導線を直径1mmの円形断面,電子密度はn=1.0×1028m-3と仮定する.これは,一般的な金属の自由電子密度と同じオーダーである.

(b) 簡単のため,導線は正負の±ρ=±neの電荷がそれぞれ逆方向にv=0.1mm/sで運動していると考える.

(1) 電荷密度+ρが,導線から1.0mの位置に作る電場の向きと大きさを計算せよ.

(2) 導線から1.0mの位置で,導線に平行にv0=1.0m/sで運動する1.0Cの点電荷を考える.点電荷が感じる「正味の」静電気力の向きと大きさを求めよ.

※正電荷,負電荷はそれぞれローレンツ収縮により密度がに変化する.ρ+-は,近似によりと表せる.

(3) 導線に流れる電流を求めよ.

(4) 電流が導線から1.0mの位置につくる磁場を求め,その磁場から電流に平行な1.0Amの電流素片が受ける力の大きさを求めよ.

Q2: 電流素片が自らの周りにつくるベクトルポテンシャルは右図の様なものである.ベクトル解析の手法を使い,ここからビオ-サバールの法則を導出せよ.

ベクトルポテンシャルの定義から,点Pの磁場は,電流素片がPに作るベクトルポテンシャルの回転を取れば求められる.


ここで,積の微分公式を使えば

の関係が成り立つ(教科書p277式A8).

ところが,rotはP点まわりのベクトル量の微分であるから,は恒等的にゼロで,結局を得る.

ここから先を続け,証明を完成させなさい.

ポイントは,ただ最終的な解が正しいことでなく,そこに至る筋道が明解で,かつ必然的であること.当然,解に至る筋道は文章で説明すること.したがって,解が正しくても大きく減点される場合がある.



解答及び解説:今回は比較的易しい問題を出した.Q1は丁寧に解いていけば必ず正解に到達する.Q2も,ちょっとした調べものだけで,それさえわかればほとんど自動的に証明が完成する.

Q1: (1) 導線の電荷密度ρを計算すると,1.60x109 C/m3となる.これを線電荷密度に換算すれば,1.26x103 C/mとなる.線電荷密度τが,距離rに作る電場の大きさは教科書p161の議論を参考にすればで,計算すれば2.26x1013 V/mである.

Q1: (2) ここは本来近似式を呈示するべきではなかったが,これを知らないと関数電卓の有効数字では計算不可能.ρ+-eff=を使い,導線から1.0mの位置の電場を計算すると,を得る.ここでaは導線の直径(1.0mm)である.したがって,1.0Cの電荷が受けるクーロン力は5.03x10-8 N の引力となる.

Q1: (3) I=τvから,電流は0.252A.正負電荷の電流を加えることを忘れないように.

Q1: (4) 無限長直線電流が作る磁場の公式,を使って磁束密度は5.04x10-8 T.電流に平行な1Amの電流素片,すなわち1.0m/sで運動する1.0Cの電荷が受ける力はもちろん5.04x10-8 Nである.

計算は問に与えられた数値の有効数字より一桁多く取って行ったので,2桁めで丸めれば,Q1(2)で求めた力とQ1(4)で求めた力は一致する.以上の考察から,動く電荷が感じる磁気力は,ローレンツ収縮により生じる正味の電荷密度が動く電荷に及ぼすクーロン力であることが証明された.

Q2: ベクトル演算n恒等式を使えば,である(教科書付録A1.7→p278).これさえわかってしまえば,,あとはこれを適宜変形してを得る.ポイントは,R方向の単位ベクトルの定義がであること,外積には交換則が成り立たないためであること.ここをきちんと理解していないレポートは減点.答えが微妙に合わない時は,やはりどこか途中が間違っているのだ.

総評:

評価は2問正解をA,1問正解をBとして,あとは部分点を考慮.