2009年度レポート課題

※レポート課題は締め切り日の17:00までに21研究室のポストに提出のこと.授業開始時,授業終了時にも受け付ける.
※レポート課題はA4の用紙を使用して解答のこと.表紙は不要.手書きの場合はレポート用紙の使用を推奨する.

第1回 10/23 〆切 11/06

図のように,半径aの導体球(中身は詰まっている)に大きさQの正電荷を与えた.系が静止状態にあるとき,

Q1:球内外の電場の大きさをGaussの法則を使い求めよ.

Q2:球内外の電場の大きさをPoissonの方程式を使い求めよ.

レポート評価の基準は,答えが正しいことは当然として,「対称性の考え方」を正しく理解しているかどうかを評価する.一方で,長く回りくどい説明は好ましくない.簡潔,完結な解を望む.


解答及び解説:

球内の電場は,授業で説明したとおり当然0だ.しかし,球外の電場をとした解答が相当数いた.

何で?????

可能性として 1. Gaussの法則の使い方が分からなかった 2. 問題文の意味が分からなかった というのを考えたが,どちらも納得できない.

さて,気を取り直して解説と行こう.この問題は,私の感覚では答を知りたいだけなら「暗算」レベルだ.しかし,暗算を行う前の前提条件を丁寧に吟味せよ,というのがレポートの趣旨.計算が暗算でできる理由は,対称性の考察と導体の性質から以下のことが言えるからだ.

  1. 系は球対称.従って電位,電場はいずれもrのみの関数である.また対称性から電場は導体と同心の任意の球面に垂直に違いない.従ってGauss面を半径rの球面にとれば,電場の面積分はとわかる
  2. 導体の静止平衡の性質から,与えられた電荷は互いに反発,球表面に均一に分布する.

これだけのことがあらかじめ分かってしまえば,あとはr<ar>=aの領域において半径rの球面をGauss面としてでそれぞれGaussの法則を適用すればよい.Gauss面が囲む電荷はr<aの領域でゼロ,r>=aの領域でQとなる.

※その後,「イコール記号はなぜr>aの側に付くのですか?」という質問を受けた.たじたじである.たしかに,何も考えずにイコール記号を付けていた.この問題の場合,電荷密度を半径の関数で描いてやると,r=aで無限大に発散する.もちろん現実にはそんなことはないが,これは古典電磁気学の抽象的な問題だから.その場合,一般的には「δ関数」を使いの電荷密度を無理矢理定義するのだが,このときちょうどr=aにおける電荷密度は「定義できない」というのが正解.すなわち,r=aにおける電場もまた定義できない.従って,上の記述はGauss面が囲む電荷はr<aの領域でゼロ,r>aの領域でQと変えなくてはいけない.鋭い質問をありがとう.
参考文献:太田浩一「電磁気学の基礎T pp. 297-300.

Poissonの方程式を使う方は厄介だが,答はあらかじめ分かっているし,やり方は教科書p45に書いてある.

ということで,上記の対称性の考察,導体の性質をきちんと述べてから計算に取りかかったレポートをA+,前提無しにいきなりGaussの法則から始めたレポートをAとした.B以下は解答が合っていないもの.

今回はA+のなかから特に味わい深いものを2通選び表彰しよう.   正解1 正解2


第2回 12/18 〆切 01/08
※12/21訂正

図のような,密に巻かれた導線を「ソレノイド」と言う.ソレノイドの長さLが半径aにくらべ充分長いとき,ソレノイド内部の磁束密Bは良い近似で「どこでも一定で,軸に沿ったベクトル」と考えて良く,ソレノイド外部の磁束密度はゼロと近似できることが知られている.では以下の問に答えなさい.

Q1:Ampereの法則を使うと,内部の磁束密度はであることを示すことができる.これを説明しなさい.

Q2:Q1の結果から,ソレノイド断面の磁束Φは直ちにとわかる.では,このソレノイドのインダクタンスを求めよ.ここで,電流Iは磁束ΦをN回まわっているので,磁束と電流の比例定数の公式はとなることに注意せよ.

Q3:コイルに電流Iが流れているとき,系に蓄えられるエネルギーを計算せよ.

Q4:系に蓄えられているエネルギーをコイルの体積で割ると「単位体積あたりに磁場が持っているエネルギー」を得ることができる.これがに等しいことを示しなさい.

レポート評価の基準:今回のレポートは,求めるべき答えは与えられている.従ってそのプロセスが論理的か,説明は正しいかを判断基準とする.前回のレポートで「答だけ」という回答が多かったため.


解答及び解説:

今回は,答えはわかっているので「それをどう解くか」の道筋が評価のポイントとなる.全問正解がA,あとはひとつ間違えるごとB,Cを採点の基本とする.

Q1は,みんな簡単と見くびっていたようだが,不正解者多数.Ampereの法則を適用するときには「どういう経路で周回積分を行ったか」を明示しなくてはいけない.これが書いていない解答は不正解.また,長方形の積分路のソレノイド外側の辺を「無限遠方」にとった解答が相当数あったが,これは意味が無いばかりでなく,問題の本質を理解していないことを示している.問には「ソレノイド外部の磁場はゼロ」と書いてあるので,ソレノイドのすぐ外側を通る周回路でも積分値はゼロとなる.また,無限遠方にとらないと積分値がゼロにならないなら,前提となる「ソレノイド内部の磁場は一定」が成立しないことに気づく必要がある.

Q2は問題文にヒントが出ているので間違えた人はほとんどいなかった.電流が磁束をN回回る,という点に注意すること,Lは電流と磁束の比例定数であるということがわかっていることがポイント.

Q3は,いろいろな方法でを示そうとがんばってくれた人がいる.私の授業では,磁場エネルギーの定義から出発して,ベクトルポテンシャルのコイル辺上線積分をコイルが囲む磁場の面積分に変形する方法を使ったね.ほかにも,LCR回路の定常状態からLに蓄えられるエネルギーを求めた解答,系に流れ込んだエネルギーをIVとしてそれを積分した解答などがあり面白かった.しかし,この問の本質はこっちではない.もう一度,問題文を読んでみよう.「証明せよ」でなく,「計算せよ」だね.は出発点で,ここからQ2の答えを用いて,系に蓄えられるエネルギーを問いに与えられた量だけで表して完成となる.で止まっている解は△とした.

Q4は簡単だったようだ.ほぼ全員が正解.Q3の解をソレノイドの体積で割り,Q1で求めた磁束密度で表せばよい.中には,「一般的に単位体積あたり磁場エネルギーがと表せること」を教科書通りの方法で示した解があったが,この問題で示すべきはそういうことではない.磁場エネルギーがであることが,ソレノイドコイルでも正しいことを示す必要がある.

上で述べた条件をすべてクリアしていて,かつ簡潔に解答した模範解答をこちらに示す

中には,問で与えられた前提条件がなぜ成り立つかを考察して,その後解答に入った猛者がいた.こういうレポートは読んでいて楽しい.

Q1の解を「複数のループコイルが作る磁場の重ね合わせ」と考え,第一原理から計算したすばらしい解答があ.しかし残念なことに,全く同じレポートが3通見つかったため,これらはすべて不正行為として1ランクダウンの評価とした.個性的なレポートほど,写すと目立つのだよ.


授業アンケートについて

今年も貴重な意見をどうもありがとう.

「毎週金曜一限が楽しみです」
「物理学科の授業で最もわかりやすい」

というのは最高の褒め言葉です.こういう感想を聞くと,意欲がわきますね.また,Power Pointと動画を使ったビジュアル教材が良かったという声が多く,励みになります.

一方で,「わかりやすい」という反応ばかりではありませんでした.それは当然でしょう.内容的に,かなり高度なことをやっているのは事実です.

「説明がわかりにくい」
「難しい」

という意見に対しては,「必修授業では無いし,概論Vの理解が前提になっている授業です.貴方は本当に概論Vを理解してから聞いていますか?」とお答えしておきましょう.中間試験,期末試験の内容は「概論Vレベル」と言っても良いものですから,単位は取れるはずです.
昨年は「早すぎる」という指摘はほとんどありませんでしたが(一人だけ),今年は随分増えました.人数にすると7人.来年はもっと増えるのでしょうか.そうなったら授業の中身を変える必要があるでしょう.

さて,例年,改善すべき点についても厳しい指摘を頂いています.

「字が読みにくい」
「記号が判別しにくい」

は今年も言われました.昨年くらいから,説明の一部をPower Pointに移行し,ノートを取らないようにして教える手法を取っています.どうせ,板書内容は教科書と全く同じ,板書のミスもあるし,写し間違えもあるでしょう.Power Pointの内容については,結論だけが理解できれば良い,と考えて下さい.もちろん興味を持った人は式をきちんと追いかけると大変良い勉強になります.また,ノートが追いつかなかったり,わかりにくかったら,そこは空けて後で教科書から写す,というテクニックを使うのは如何でしょうか.

授業はじめにOne Pointを配るやり方は定着しました.ことしは進度に合わせて作り直したので見やすくなったでしょう.評判も上々です.

最後に,評価方法の見直しについて.実に様々な意見がありました.下に一例を示しましょう.

  1. 今年のように中間試験と期末試験をメイン(80%)に,レポートを補助(20%)にする
  2. レポートと期末試験が50%ずつ(昨年までの方式)
  3. 期末試験の一発勝負
  4. レポートのみでテストなし
  5. 毎回,授業の後半で小テストを実施(次週〆切の小レポートでもOK),それを評価に加える
  6. 授業で質問した人には加点

全員の望みを満足することはできませんが,中間と期末で範囲を分けたことは概ね好評だったようです.これは来年も続けましょう.また,「持込可にしてほしい」という意見が多かったので,今年の期末試験は試験的に「One Pointのプリントを持込可」とします.来年度以降続けるかどうかは,下位の成績がどの程度上がるか,で考えます.

小テストの実施については,工学部の「電磁気学基礎」や「物理学基礎」では既に何年も前から行っている方式で,手応えも感じていますが,「電磁気学T」に適用するのは難しいと考えています.むしろ,本講義はただ授業を聞いただけで理解できるような内容ではない,ということを分かって下さい.レポート,試験のためにもう一度教科書を開いたときにはじめて授業で聞いた内容が役に立つわけです.

また,「電磁気学T」で出席を点数化することは今後もありません.これは私のポリシーです.教室に来て座ってるだけで点数を下さい,というのはトコトン甘い.