2008年度レポート課題

※レポート課題は締め切り日の17:00までに21研究室のポストに提出のこと.授業開始時,授業終了時にも受け付ける.
※レポート課題はA4の用紙を使用して解答のこと.表紙は不要.手書きの場合はレポート用紙の使用を推奨する.

第1回 10/17 〆切 10/24

Q1: 図のように等しい大きさの二つの正電荷が置かれている.A点の電場が矢印の様な大きさ,向きを持つときB点の電場を作図により求めよ.解の正確性のみでなく,作図のわかりやすさも判定する.

解答用紙(PDF)

Q2: 原点を中心にして電荷が球対称に分布している.ただし密度は一様ではなく半径rにおける電荷密度はと表される.このとき,半径rにおける電場の大きさをrの関数で表しなさい.


解答及び解説:

今回の問題は例年よりは易しくしたつもりなので,採点はそれほど楽しめないかと思ったがさにあらず.ユニークな解答が多くあり楽しめた.採点基準は,Q1とQ2の両方を解こうと頑張った人は,片方正解がB,両方正解でAとした.はじめから片方の解答しか出さなかった人は正解でC.

Q1を解くには,以下の事実に気がつく必要がある.ここで左の電荷をq1,右の電荷をq2としよう.

  1. A点の電場はq1の発する電場とq2の発する電場の合成なので,分解すればA点においてq1の発する電場の大きさがわかる.
  2. B点はq1からの距離がA点と同じなので,電場ベクトルの絶対値はA点と同じとなる.もちろん,向きはq1からB点に向かう方向.
  3. q2からB点までの距離は,q1からB点までの距離の倍である.従って電場強度は1/5.

これらの事実を使って,あとはベクトルの合成をすれば,B点における電場を作図することが可能だ.ここで,q1がB点に作る電場はA点に作る電場と向きが逆なだけで,作図に苦労はない.一方,q2がB点に作る電場の大きさはこの1/5.この長さを,私は定規で測って5で割って作ってもらうことを想定していたが,この長さを作図で作ってきた諸君が少なからずいた.これは出題者の意図を越えた解答であり,脱帽である.なかでも分かりやすいものを代表で二点紹介する.   正解1 正解2

Q2は易しいと思ったが,正解率は予想を下回った.まず,正解者のほとんど全員に言いたいことが一つある.君たちの解答には大切なことが欠けている.球面をGauss面とするとき,

  1. 対称性の考察から電場がガウス面に垂直であること
  2. 同じく,電場の大きさはガウス面上のどこでも一定であること

をきちんと宣言してからGaussの法則を適用しなければいけないのだ※.今回は正解としたが.次に,多かった誤答について解説する.半径rより内側の全電荷をとしている人がかなりいたが,これは間違いである.電荷密度は半径rの関数.従って,全電荷は[密度]×[体積]という計算では算出できない.この考え方が通用するのは電荷密度が定数の場合だけだ.気をつけよう.ではどうするかというと,こういう時のために我々は「積分」を教わっている.半径r,厚さdrの球殻が持っている電荷はだから,半径rの内側の全電荷はこれを0からrまで積分することにより求められる. 正解の中から,Gauss面に関する宣言をきちんとした貴重な解答をこちらに示す.

※もちろん,Gaussの法則はあらゆる場合で成り立つが,電場の面積分がになるのは上の条件を満たした場合のみである.


第2回 11/14 〆切 11/21

Q1: 図のように,極板面積S,極板間隔dの平行平板コンデンサーがある.(1) 極板の大きさに等しく,厚さがd/2で比誘電率が3の誘電体を極板間に挟んだ.コンデンサーの容量を求めなさい. (2) 極板間隔dに等しい厚さ,面積がS/2で比誘電率が3の誘電体を極板間に挟んだ.コンデンサーの容量を求めなさい.

Q2: 極板間に,図のように比誘電率が1から3までzの一次関数で連続的に変わる媒体を挟む.コンデンサーの容量を計算しなさい.

条件:いずれの問題も端の効果は無視して,電場ベクトルは極板に垂直と考えて良い.また,コンデンサーの直列接続,並列接続の公式を使うことを禁止する
回答は答のみでなく,考え方の筋道が分かるように書くこと.論理がしっかりした回答を高得点とする.


解答及び解説:

コンデンサーの公式を使用禁止にしただけで,どんな教科書にも出てくる単純な問題がいきなり難問になってしまう.しかし,ではなぜコンデンサーの公式が使えるのか,説明できるかな?『電磁気学』の授業はそれを説明できる能力を養うのが目的なのだ.

採点基準は,Q1を両方正解でA,片方でも正解ならBとしよう.とにかく,なんか一生懸命やったレポートをC,Q2の正解者にはA+を進呈する.

この問題は電場および電束密度の境界条件,そして電束密度の保存則を使って解く問題だ.もう一度整理しよう.誘電体の異なる界面において,

  1. 電場は接線成分が保存される.
  2. 電束密度は法線成分が保存される.
  3. 誘電率の異なる界面を含むどのような境界をとっても,閉曲面内部の電荷と電束密度の表面積分の間にが成立.←保存則

知っておかなくてはいけないのはこれだけ.すると,極板間の電場および電束密度は下図の様になることが想像される.

Q1(1)のケースでは,対称性の考察から電荷は極板上に均一に分布しているはずである.従って均一な電束密度がコンデンサー内部に充満している.この大きさは極板に与えた電荷の大きさをQとしてである.一方,電場は電束密度からと求められ,上半分と下半分の電場はそれぞれとなる.あとは,コンデンサーの容量の求め方を思い出す.

  1. 極板に適当な大きさQの電荷を与える.
  2. 極板間の電位差を計算.このときを使う.
  3. から容量が求まる.

答は

Q1(2)のケースでは,対称性の考察から電場はコンデンサー内部のどこでも一様でなくてはならない.そうでないと,誘電体のあるところと無いところで極板間電位差が違う,という事態が起こる.別の考え方では,誘電体界面の電場の接線成分(電場そのものだ)が保存されるので電場は一様,と考えても良い.今度は電荷Qを与えてから電場を求める方法は面倒なので,電場Eを先に決めてからQを求めよう.今度はと計算する.すると極板上電荷量はと求められ,容量はとなる.

Q2はQ1(1)の応用.電束密度がコンデンサー内部で一様であることは変わらないが,電場がzの関数で徐々に変化することを考えなくてはならない.という数式を導くことができるか,ここがポイント.次のポイントはこの式の積分だが,ちょっと難しい.コイツの不定積分は自力でできなくても良いが,どこを探せば答があるかを知っておくこと.岩波の「数学公式I」ならp71,Mathematicaにやらせるなら

だ.最終的な答はとなる.

今回の優秀レポートは,正解者のなかからロジックの明瞭さ,図の見やすさ,数式や文字の読みやすさなどを考慮していずれも甲乙付けがたい2通を表彰したい.

優秀賞1  優秀賞2


第3回 12/19 〆切 01/09

図のように無限に長い二重管状導体があり,逆方向の電流Iが流れている.内導体の半径をa,外導体の半径をbとしよう.導体の抵抗は極めて小さくゼロと近似して良い.

Q1: この系全体で磁場の分布はどうなっているか.適当なグラフを作り,磁場の様子を説明しなさい.なるべくなら数式で計算,グラフソフトで描かせる方法を希望する.

Q2: 電流が行って帰ってくるループとすれば,自己インダクタンスが定義できる.またインダクタンスは「長さあたりいくら」という量で表現可能である.では,この系の長さ1mあたりの自己インダクタンスを求めよ.

Q3: 長さ1mあたりに蓄えられたエネルギーを求めよ.

Q4: 電流をいったん切り,内導体と外導体の間に比透磁率の磁性体を挿入する.再び電流をIまで上げると磁性体のある空間に蓄えられるエネルギーは倍となる.電流は同じなのに,エネルギーが増えるのはなぜか.エネルギー保存則から言えば誰かが損をしなくてはいけないのだが,一体誰が損をしているのだろうか.上手い説明を求む.


解答及び解説:

Q1はグラフの描き方に工夫の余地がある以外は平凡な問題.Q2,Q3も教科書通りだ.一方,Q4はどの参考書にも載っていない問題なので難しかったと思う.

Q1は,系の対称性から磁場はz軸に対称,かつz軸を巻くように存在することは明らかだ.あとは半径rの円でAmpereの法則を使って,

半径[m] 磁場[T]

となる.次にこれをグラフにする方法だが,上から見た概念的な図と,側面から見たのグラフを描くことが考えられる.両者を組み合わせ,空間的な磁場分布が分かるように工夫されたのが良いグラフと言えるだろう.模範的解答をこちらに示す.

もちろん,側面図だけでも正解.しかしグラフソフトを使ったグラフを描いた人は小数だった.おそらく,

といったところか.もちろん,a,bは適当に仮定して良いのだし,グラフが値を持たない範囲は修正液で消しても良い.そういう意味での良い解答を下に示す.


次にQ2,Q3.まずはセオリー通りの正解を下に示す.


ほとんど全員がこの方法で解いてくれた.これはこれで良いのだが,自己インダクタンスを計算するのに,閉じたループになっていない電流を使うことに違和感は無かったのかな? 私ならこの問題をこう考える.


Q4の正解例を以下に示す.

なぜ蓄えられるエネルギーが倍になるのかを説明した解答が非常に多かった.「そういう問題とは思わなかった」? だったら問題文をもう一度良く読んでみよう.


授業アンケートについて

今年も貴重な意見をどうもありがとう.例年,オリジナル教科書については「良い」という意見が多いですね.「授業への熱意が感じられる」という評価が多かったのも自慢したいところです.

今年から,かならずPower Pointや動画,webサイトなどのビジュアル教材を使うようにしたところが昨年度と大きく変わっています.まだ完成度が低く,授業の目玉と言うほどには育っていませんが,概ね好意的に評価してもらっています.

今年は,進度を12/13とすることができたので,「早すぎる」という指摘はほとんどありませんでした(一人だけ).プロジェクターと板書を交互にやるのも功を奏したのでしょう.来年度は授業が14回になるそうなので,ビジュアル教材は更にパワーアップを考えています.

しかし,出席率は相変わらず低いですね.「電磁気学I」は選択科目なので,敢えて出席を取っていません.出席率が意欲のある学生の割合の目安と思っていますが,現状は50%くらいでしょうか.

さて,例年,改善すべき点についても厳しい指摘を頂いています.

「字が読みにくい」
「記号が判別しにくい」

「教科書の微妙な間違いが多い」
「毎年同じ教科書を使って下さい」

「演習問題を増やして欲しい」
「問題の解説を増やして欲しい
「値段が高くなっても良いから余白を増やして欲しい」

「磁場に入ってから現象の説明より証明が多くなった」
「授業で使ったサイトのURLを明記して欲しい

昨年度好評だったOne Pointについての意見はありませんでした.がっかり.まあ,進度がプリントとズレてきているので,インパクトが少なかったのでしょうか.来年度は遅い進度に合わせてプリントの内容をずらす予定です.

追加:12/19に取ったアンケートで,「なぜレポート得点一覧が見られるようになっているのですか」という質問がありましたので答えましょう.これは成績評価に大きな影響を与える指標ですので,評価の透明性を高めるための処置です.基本的に期末試験の得点は公表されませんので,過去に「○○君より出来は良かったはずなのになぜ評価は下なのか」という質問を良く受けました.そのため,レポートの提出状況と評価を見られるようにして,あらかじめ質問に答えるようにしています.期末試験は期末試験で,正解を公表して自己採点ができるようになっています.

優秀なレポートを公開することに対しての,本人から批判がありましたが,他のみんなの役に立っているということで勘弁して下さい.これは私からのお願いです.