旧サイトの残滓:パソコンつれづれ日記

05/05/15 オルタード・カーボン

さて,今私が読んでいるSF小説が今回の表題.いわゆる「サイバーパンク」に分類されるもので,舞台は人類が広く銀河系に散らばった27世紀.人間は自分の脳機能を全て首の付け根のメモリー・スタックに記録し,必要とあれば別の肉体に人格を転送したり,死後新しい肉体を金で買うこともできる.もちろん,超光速通信で他の星系へ「旅」をすることも可能だ.

で,金持ちは一定時間毎に自分の人格を保険会社にバックアップさせたり,肉体が損傷したときのための予備(クローン)を何体も用意したり,高い金を出して特別に強化された肉体を買うこともできる.原題の"Altered Carbon"は「変更された身体」の様な意味だと思う.

この世界感,なんか親近感があると思ったら,私の現在のPC環境とそっくりであることにある日気がついた.PCの「人格」といえば,例えばMy Documentsやe-mailのデータ,パーソナライズされたソフトウェアの設定,そしてIMEの登録単語やブラウザの「お気に入り」などが挙げられるだろう.もちろん,「肉体」はハードウェア,OSは小脳などの機能に例えられるだろう.

そして,今や個人が複数のPCを(金持ちはハイスペックなものを)持ち,それを同時に使いこなしたり短期間に買い換えたりすることは当たり前だが,それが自分のものになったと感じる瞬間は,やはりそのPCにユーザー固有の「人格」を植え付けた瞬間だと思う.

今回の話は,私が如何にして複数のPC間で一つの「人格」を維持しているか,と言うこと.私の場合,上記の人格に相当するデータは普段は2.5インチのHDDに記録している.そして,自宅で戻るとまずは,それをサーバーに接続する.私が自宅で使っているPCは4台ある(!!)が,それらは全てネットワーク越しにそのHDDのデータを参照している.従って,全く同一の人格が複数のPCで実現する,と言うわけだ.もちろん,同時書き込みによる障害のリスクは常にあるので,同時に使うという訳ではなく,時間,場所,仕事の内容により使うPCを変える,と言う感じ.


自宅での運用

そして,朝自宅を出るときには2.5" HDDはスクリプトによって自動的にサーバーとの接続を解除されているので,そのままUSBケーブルを引っこ抜いて大学へ持っていく.もちろん,前夜に2.5"からサーバーのローカルドライブに全データのバックアップが自動的に取られていることは言うまでもない.大学ではそのHDDをデスクトップ機に刺せば,自宅と同じ「人格」が大学に出現する.


大学での運用

出張の時はどうするか,というと,最近買ったR3には「自立モード」と「ネットワークモード」があり,ネットワークモードのときはサーバーのデータを人格として利用するが,自立モードのときは,R3の内部データを人格として利用する.従って,出張に行く前には,2.5" HDD内部のデータをR3に転送する「チェックイン」という作業を行う.もちろん,これも自動スクリプト.出張から帰ったら,R3のデータをHDDに「チェックアウト」すればいつもの生活に戻ることができる.


自立モードへの移行(チェックイン)と,書き戻し(チェックアウト)

更に,自宅のデスクトップ,大学のデスクトップは,2.5" HDDが見つからないときはネットワークにつながったR3を自動検索し,R3のHDDをネットワーク接続して人格データとして使うスクリプトが仕込んである.従って,面倒なときはR3に人格を保ったまま,他のPCを使うことも出来る.


ノート(R3)に人格データを残したままでの運用(自宅)

または

ノート(R3)に人格データを残したままでの運用(大学)

こういう運用で最も気を付けなければならないのは,どちらが最新のデータであるか,細心の注意を払って運用する必要があるということだ.さもないと,微妙に異なる「自分」がふたり出来てしまい,これをマージするのに一苦労してしまう.

こう言うところも「オルタード・カーボン」では丁寧に書き込まれていて,人格を転送するときにオリジナルを消去しないことは重大な犯罪行為になるとか,逆に闇市場で自分をふたりに増やした暗殺のプロとかが出てくる.

途中,主人公が男性から女性へ肉体を入れ替える場面があり,「デスクトップとノートを使い分ける様なもんかな」と想像してしまった.ストーリーは未だ読んでいない人のために言わないけれど,SFマニアなら読んで損なない,とだけ言っておこう.