関数電卓博物館

SHARP EL-8103

 

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メーカー SHARP 11/04/02初出
型式 EL-8103   
発売年 1974  
販売価格 \29,800-  
動力 単三×5 or ACアダプター  
表示方式 蛍光表示管  
コレクション
付属品
なし  
SHARPの関数電卓としては前年に出たEL-8101に次ぐ第二弾のモデル.機能はEL-8101と変わらないが,表示がLEDから蛍光表示管になり電池寿命が延びる.

この当時,SHARPは関数電卓を低コスト化するために様々な工夫をこらしている.先ずボタンの数にご注目頂きたい.ほとんど,普通の電卓と変わらない.これは,ファンクションを全て値数キーの裏とすることでファンクションエリアを廃したものだ.私のコレクションで,この思い切った構成をとるものは本機のみ.

つぎに内部処理だが,この電卓,関数電卓のくせに指数表示ができない.従って,109より大きな数,10-9より小さな数を扱うことができない.これもかなり思い切った仕様いえるだろう.当時,関数電卓は屋内で使う卓上型と屋外で使うポータブル型に分かれており,屋外で使う人はほとんどが土木・建築分野の人だったため,指数表示を省略してもそれほど影響は無かったのだろう.

マイナス符号は一番右に出る.

関数機能は三角関数と対数,平方根と逆数のみで,まさに「電子計算尺」といったシンプルなものである.かろうじてexはあるが,10xは省略されている.しかし,この年を最後に計算尺の生産が終わってしまうわけだから,電池で動いて持ち運べる三角関数計算機が科学技術の世界に与えた影響は非常に大きかった.

「じゃあ,10nの計算はどうするの?」という人はこの時代でエンジニアとしてメシを食うことはできない.例えば102.5を知りたかったら,exp[2.5÷log(e)]とやればよい.道具が不便だった頃,エンジニアたちはこういう換算公式を幾つも諳んじていたという.

インターネットで検索すると,本機はまだまだオークションで入手が可能なようだ.手に入れた人に注意を一言.このモデル,電池ボックスの取り外しがトリッキーな方式になっている.本体右にドライバーが入る程度のスリットがあるが,ここにマイナスドライバーを入れて押すと,電池がボックスごと外れるようになっている.